より多くの人がサステナブルなもの・ことへの意識を持ち始めている一方で、「意識」と実際のサステナブル商品の「購買行動」の間にはギャップが大きく、エシカル消費(「倫理的な消費」という意味で、生活者が各自にとっての社会・環境的課題に配慮した消費活動を指す)促進の大きな課題と考えられます。
実際、私たちが商品やサービスを選ぶ際には価格やブランド(企業)への信頼、個人の好みなどが判断要素となります。エシカル消費促進においては、「サステナビリティ」が伝わっている、個人の価値観と合っていることが重要です。ここで忘れてはいけないのは、対象の市場(国や地域)によって、生活者が注目している価値観や社会・環境問題が異なっていることです。適切にメッセージを伝えながらコミュニケーションをとることが肝になります。
本記事で事例を踏まえながら、生活者に響くサステナビリティ・コミュニケーションのポイントを紹介します。
1.ローカライズ
1-1:「サステナブル」に関する市場独自のPOINTを理解
市場によって大切にされ、消費者の注目を浴びる「サステナブル」は異なっています。例えば北米ではリサイクル、欧州・中東・アフリカではフェアトレード、南米では代替エネルギー、APACでは環境に優しいなどが注目されています。
また、日本では「サステナブル」と聞くと「環境」のイメージが強い一方、発展途上国や社会・経済的な不平等が多く見られている社会では、貧困問題、教育、健康と福祉、飢餓など、社会をどう持続的に守っていくかという持続可能性(social sustainability/ economic sustainability)への関心が高いです。
例えば、ゴミによる洪水や病気、海洋汚染、教育機会の不平等などが身近な存在であるインドネシアの場合は、これらの解決に貢献する取り組みが生活者の注目を集めており、ブランド(企業)の価値を上げています。
1-2:キーワードを適切に活用した発信
市場によってキーワード(言葉)に対する印象や意味が異なるため、こちらの意図が伝わるように市場に合わせたキーワードを検討することが大切です。例えば環境・熱帯林保護活動では「Palm Oil-Free」やパーム油を使わないという商品ラベルやキーワードが多く使われています。
アブラヤシ農園開発が森林減やオランウータンに被害を与えていると言われ、欧米を中心にパーム油反対活動が生まれたことからこのキーワードが多く使われるようになりました。しかし、世界のパーム油生産の85%を占めるインドネシアとマレーシアでは、パーム油の社会や経済への良い影響が大きいため、「Palm Oil-Free」キャンペーンが強く批判されており、2019年に「Palm Oil-Free」ラベルの商品がマレーシアとインドネシアで販売禁止とされ、欧米からの動きとは全く逆の動きがありました。
※現在はアブラヤシ農園開発による森林減問題の解決に向けて、持続可能なパーム油認定証システムが進んでおり、より環境に配慮したパーム油が調達可能です。
市場がどのようなことに注目をしているのか、肌感覚でも分かるローカルスタッフをチームに入れ、キーワードをローカライズすることが1つ目のポイントです。また、政府の動きも含めて、ニュース等の最新情報の確認も必須です。
2. 第三者認証の獲得
経済動向分析や調査等を行うThe Conference Boardの調査によると、サステナブルなブランドや商品を選ばない大きな理由は、生活者自身にどの商品がサステナブルか判断する知見がない、どのブランドを信頼すべきか分からないからという結果が出ています。
信頼度や生活者の多くが知るような知名度の高い第三者認定証を得ることで、ブランドに対する信頼度が上がり、そのブランドや商品を選ぶ理由の1つになると考えられます。
※第三者認定証例:サステナブルパーム油、Fair trade(公正取引)、Cruelty-free(動物を用いた実験がなされていないこと)等。
3. 透明性のある事業形態とその発信
IBMの調査によると、
世界の73%が商品の購入検討の際にトレーサビリティ(日本語では「追跡可能性」と訳され、商品の原材料調達や製造プロセス、流通方法等の生活者の手に届くまでの一連の流れ)が大事だと答えています。内71%は値段が高くても原材料や自分の手に届くまでのプロセスが分かる商品を購入すると回答しており、商品が自分の価値観と合っているかどうかを気にしています。
透明性に対する関心が高まっている今だからこそ、これを軸にした情報発信をすることで、生活者からの信頼度や購入のチャンスを高められると考えられます。
4.エシカル消費による実際の効果を発信
エシカル消費の課題として冒頭に挙げているように、生活者の「意識」が「購買行動」に結び付いていない事実があります。その購買が何につながるのか、どう社会に貢献できるのか、情報量が少なく生活者の理解度が低いため、その「購買行動」が地球や社会に対してどのような効果があるのか発信することが大切です。
例えば、何本の木が植えられたのか、どれぐらい脱炭素に貢献しているか、コミュニティにどう貢献しているか等、達成できることや行動の先にある地球や社会を発信することで、「購買行動」の効果のイメージがより鮮明になります。
例として海外での事例を2つ紹介する:
・2010年イギリスUnileverが消費者が選ぶ商品によって熱帯雨林の保護・破壊に繋がるというメッセージを伝えるサステナブルパーム油のキャンペーンを実施。キャッチコピーとして「Small action, big difference(小さな行動、大きな影響)」とキャンペーン画像の最後に記載し、消費者によりサステナブルな購買行動を促した。
・2020年9月にGojek Indonesia(フィンテック、配車サービス、配達サービス会社)が環境保護企業“jejak.in”との連携で開発した“GoGreener Carbon Offset”サービスを開始。消費者が日常生活において自分自身が排出するCO2を計算することや、その排出量に合わせて植林をする寄付ができ、植林のプログレスまでモニターできるGojekアプリ内のサービスであった。サービスに対する反応がよく、3か月間でGojekとjejak.inがジャワ島の3エリアに訳1,500本のマングローブを植えることにつながった。
上記2つの事例の内、Gojekのアプリ内でのカーボン・オフセットサービスを導入は、環境保全やサステナビリティに貢献したいけど、どう始めるかがわからない人に対して簡単なアクションの提供に成功した事例です。
通常は目に見えない脱炭素の活動を見える化にすることで、生活者にとって「行動→進捗→結果」というプロセスが見えて、小さな行動でも実際に貢献ができるという感覚を持たせ、行動を促すことができたと考えられます。
5.ブランドのコアバリューや顧客ベースを理解したうえでの戦略づくり
グリーンウォッシュ(実際はサステナブルな取組を取っていないけれど、環境に配慮しているように見せかけ、誤解を与えるようなこと)と間違った認識を生まないように、コミュニケーション戦略と企業、またブランドのコアバリューと実際に取り組んでいるアクションを一致させる必要があります。また、顧客ベースがある場合は、効率的にメッセージを伝えるためにブランドのコミュニケーション戦略を顧客ベースが注目する要素また、ブランドに対する価値観と合わせたほうがミスコミュニケーションのリスクが抑えられます。
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この先の地球の未来のため、より良い社会のため、各企業や自治体は“グリーン”や“サステナブル”に対するアクションを続々と始めています。アクションだけでなく、生活者の「サステナブル」に対する意識向上に合わせて、エシカル消費(購買)につながるようなコミュニケーションも必要です。本記事でご紹介したローカライズ、透明性向上、第三認証獲得、行動の結果の掲示等、生活者の信頼度を上げ、実際の行動につながるポイントをコミュニケーションのヒントとして活用ください。
ベクトル海外事業本部では、国内外問わずにサステナビリティ活動のPR・広報・ブランディングを実施しております。また、企業のサステナビリティ活動の研修セミナー・ワークショップや情報収集、動画制作なども可能ですので、お気軽にお問合せください。
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