ベクトルタイは「タイでモノを広めたい」方のマーケティング支援を行っています。今回はタイならではの新たなトレンドを紹介します。
参照:YouTube
こんにちは、ベクトルタイのIrinです。
タイといえば「LGBTの先進国」とも言われるほど、社会的に性の多様性が浸透しており、なんと性別が18種類あるとも言われています。そんなタイでは、最近「Yシリーズ」と言われる、ボーイズラブ(BL)=男性同士の恋愛モノのドラマが大人気になっています。
「Yシリーズ」のYは、なんと日本語の「やおい」(男性同性愛を題材にした女性向けの漫画や小説の俗称)からきています。日本でも少し前に「おっさんずラブ」のヒットによりBLが表舞台に登るまでになりましたが、タイでのYシリーズの人気はここ数年続いており、現在では家族でお茶の間で見られるほど一般的に受け入れられるコンテンツとなっています。(ちなみにタイで言う”シリーズ ”は、日本でいう”TVドラマ”のことです)
ではなぜ「Yシリーズ」がこれほどまでメインストリームになったのか、一緒に見てみましょう!
▋タイでの「Yシリーズ」の人気度
タイでも以前のBLコンテンツは、小説やアニメ・漫画が中心で、一部の女子の間でのみ人気がありました。しかし、この10年の間で、徐々に男性同性愛を描いたテレビドラマ等が出始め、どんどん人気が高まりました。そして、特にこの5〜6年の間に作品数も大幅に増え、その人気はますます高まりました。
特に、コロナ渦のロックダウン期間中は人々が家にこもり、映画やドラマ等のエンタメコンテンツの需要が高まったこともあり、Yシリーズも大ヒット。Google検索でみても、ここ5年間で徐々に伸びてきた検索数が、2020年の4月にどん!と一気に伸びているのがわかります。
Yシリーズの検索ボリューム推移
以前は若者もYシリーズを見る時は、大人に見つからないようにスマホの小さな画面でこっそりと見ていましたが、ロックダウン期間は家族みんなが家にいるため、小さなスマホからリビングのスマートTVへと移り、家族と一緒に見るようになりました。そうした大人たちも若者間での人気に伴い、自らもYシリーズにはまる人が続出するようなってきました。
タイのオンライン動画プラットフォームの中で、最もYシリーズが充実しているのはLINE TVです。LINE TVは2016年からYシリーズを配信しており、現在は33作と様々な作品を揃えています。LINE TVの情報によると、Yシリーズの視聴者は2018年では全体の視聴者の5%程度だったのが、2020年の5月では20%にまで高まったそうです。
LINE TV内の作品カテゴリには「ドラマ」や「スポーツ」に並んで「Yシリーズコレクション」が設けられている。
▋なぜ「Yシリーズ」がここまで主流になったのか?
ではなぜここまでYシリーズが主流となったのでしょうか?その理由を見てみましょう。
☞理由①:主演俳優ペア「クージン」の人気
Yシリーズで男性愛を演じる主演俳優は、演技のうまさや見た目の良さだけでなく、主演俳優二人の「相性の良さ」こそが重要とされます。相性が非常にいいペアはタイ語で「クージン」と呼ばれます。まさに、俳優一人ひとりの人気以上にこのペア「クージン」がヒットを生んでおり、クージンたちがファンミーティングに参加し、ファンサービスをすればするほど、熱狂的なファンたちの間で話題になっているのです。
☞理由②:リアルにありそうな親近感のわくストーリー
Yシリーズのストーリーは、多くが若者か学生の話です。メインの視聴者である若者にとって、とても親しみやすいストーリーため、学校やSNSで盛り上がる格好の話題のネタとなります。また学生以外でも、タイの女性の大好きなロマンチックな話が多く、視聴者の間でとても盛り上がっています。
☞理由③:マーケティング戦略の成功
Yシリーズはドラマ内だけに止まらず、ファンミーティングやキャンペーンなどドラマ外でもファンとの交流を持てる場を戦略的に設けてきたことが、人気に拍車をかけました。
参照:LINE TODAY
例えば、LINE TVは、3つの人気Yシリーズのクージンを起用したキャンペーンを仕掛けました。キャンペーンでは、ラインの公式スタンプや、着信音「LINE Melody」でドラマの主題歌を販売したり、過去のYシリーズの再放送中に、同時に見ているファンたちがLINE OpenChatで会話できるライブ配信イベント等を開催。さらに、再放送のライブ配信中の視聴者から数名を選んでクージンとビデオコールができるイベント等、ファンがこぞって参加し、SNS上でも拡散したくなる要素を多数仕掛けています。
▋どのように「Yシリーズ」を活用できるのか?
これほど人気のYシリーズ。タイ企業各社も人気に相乗りしようと、様々なタイアップを仕掛けています。では、どういうメリットや効果が狙えるのでしょうか?
☞特徴①:Yシリーズファンの購買力
Yシリーズのコンテンツを視聴している人は主に18〜25歳、続いて25〜34歳の女性です。この年代の特に熱狂的な女性ファンたちは、好きな俳優の「沼」にはまったらとことん貢ぐ購買力があります。
例えば、最近大ヒット中のYシリーズ「2gether: The Series」の主人公ブライトへのラブコールのために、ファンたちがバンコク中のたくさんの大型ビジョンや屋外広告でブライトを称賛する映像を流す「LEDプロジェクト」を行いました。
また、この熱狂ぶりはタイのファンだけではありません。マレーシアのファンたちは、資金を募りブライトの名前で動物園に象と猿をアドプションをしました。ベトナムのファンたちは、なんと夜空に輝く星にブライトと名付けたそうです!
バンコク中心地のビジョン
☞特徴②:Yシリーズファンがブランドのエバンジェリストにもなりうる
主演俳優たちをブランドの広告に起用することで、ロイヤリティの高いファンたちの熱量を活かして、ブランドの伝道者へとつなげることも可能です。
実際に、タイの様々なブランドがYシリーズのクージンたちをプロモーションに起用しています。例えば、化粧品ブランドはこれまで美しい女性が起用されてきましたが、今ではタイのローカル人気ブランドの「KARMART」のCathy Dollや「Mistine」等では、Yシリーズのトップ俳優がプレゼンターになっています。この戦略は、非常にヒットしているんです。実際に私の友人も、大好きなYシリーズの俳優が紹介している商品を15万円分も買ったそうです。(すごいですね・・・!)
☞特徴③:SNS上での拡散力
Yシリーズのファンたちは、SNS上で意見を共有することも大事にしています。 若年層が主に使用しているTwitterの#ハッシュタグを見ると、常にクージンや主人公の名前のが話題の#ハッシュタグ第1位にランクインしています。Twitterだけでなく、LINE TVのライブチャット上でもファン同士のコミュニティが多数あり、常に盛り上がりを見せています。SNSでの拡散を狙うなら、Yシリーズを絡めた施策を実施することで、一気に広まることが期待できるのではないでしょうか!
☞特徴④:先進的なブランディングにも寄与
Yシリーズとのタイアップは、トレンドをおさえた印象を与えるだけでなく、ブランドとして多様性への理解を示すことでもあり、モダンでオープンな印象を与えます。老舗ブランドが、新たな顧客層や若者を取り込みたい際などには、うってつけではないでしょうか。
▋まとめ
・タイのBLドラマ=Yシリーズはいまや若年層だけではなく、お茶の間でも人気のコンテンツに。
・「Yシリーズ」が人気になった理由は、人気「クージン」の台頭や、親近感のあるストーリー、ファンの心を掴むマーケティング戦略の成功が秘訣。
・「Yシリーズ」とのタイアップは、「ロイヤリティ獲得」「拡散力」「先進的なイメージ」が期待できる!
みなさん、一度Yシリーズが見てみたくなったのではないでしょうか?
日本からも、タイ語/英語字幕ですがYoutubeでも見ることができますよ!(タイは公式にテレビ局がYoutube上でコンテンツを無料配信しています)
ぜひ一度見てみてください♪
執筆:Irin/編集:Mari
Irin | アイリン
ベクトルタイのシニアコンサルタント。埼玉大学に留学経験があり、日本には全国各地何十回と訪れている。タイ語で日本の観光地やおしゃれなカフェを紹介するページ(@irin.in.arai )も更新しています♪
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