こんにちは、ベクトル香港の文野でございます。香港より現地の「生」の情報をお届けします。香港でマーケティングやPRを行いたい方、今の香港のマーケットを知りたい方、ぜひご覧ください。
▋ライブコマース
ライブコマースとは、ライブストリーミングとEコマース(電子商取引)を組み合わせたもので、ライブ配信型のEコマースです。インフルエンサー(KOL)等を起用して、メーカーやブランドの商品を紹介するライブ配信とオンライン販売を組み合わせ、商品・製品の広告と販売を同時に行えることが特徴です。ライブコマースのマーケティング手法はオンラインショッピングをさらに楽しいものにしてくれる「ライブ」で特別感や親近感、一体感を生み出し、ECサイトで購入するだけでは得られない「体験」を視聴者に提供することを可能としています。
中国本土では既に主流となっているライブコマースですが、香港では未だ馴染みの少ないマーケティング手法です。ただ、新型コロナの流行が香港居民の消費活動をオンラインへと急速に加速させており、香港でも少しずつ注目を集め始めています。今回は香港におけるライブコマース事情について少しお話しさせていただきます。
▋爆発的成功を収めた中国におけるライブコマース
ライブコマース超先進国の中国では、商品に対する信用度が低いことからインフルエンサー(KOL)を使ってのライブコマースが既に成功を収めており、企業やブランド、メーカーとしても必要不可欠なマーケティング手法となっています。中国のライブコマースの市場規模は2019年の時点で約4,300億元(約6.5兆円)、約4億人の利用者がいると言われています。
日本でも毎年報道されている中国最大のショッピングイベント11月11日の「独身の日」でもライブコマースが用いられ、若年層の取り込みや新規ユーザーの獲得に一躍買っています。中国の主要なライブコマースプラットフォームはアリババ傘下の「淘宝直播(タオバオライブ)」、テンセントの「快手(クァイショウ)」、バイトダンスの「DOUYIN(中国版 TikTok)」があげられます。
中国市場でのライブコマースは大きく二つのタイプに分かれており、一つはインフルエンサー(KOL)中心のライブコマースで、このインフルエンサー(KOL)による配信を通じて、ユーザーを豊富な商品を持つECサイトに誘導するものです。もう一つは、豊富な商品を保有する店舗が中心とした、ライバー(店舗の従業員)本人によるライブ配信スタイルです。アリババの「淘宝直播(タオバオライブ)」の2019年度の取引額は約2,000億元(約3.2兆円)に達し、前年度の約1,000億元より200%増を遂げています。
▋新型コロナの流行で香港居民の消費のオンラインシフトが加速
香港の面積は約1,106平方キロメートル(東京都の約半分程度)、人口約750万人ととてもコンパクトな都市で、ほぼ全香港居民が中心街のショッピングモールまで約30分圏内の距離に居住しており、かつ狭い域内に実店舗が高度に発達しているため、ECが育ちづらいと考えられていました。そんな中、ここ数年で香港EC市場のメインプレーヤーとして躍り出たのが HKTVMall です。
コロナ禍の香港において香港居民の消費活動がオンラインへと変化している中、競合のアリババ参傘下の「淘宝直播(タオバオライブ)」や「京東商城(JD.com)」などと厳しい競争に直面しているにも関わらず、HKTVMall は現在香港市場トップのローカルオペレーターとしての地位を築いています。HKTVMall の登録会員数は82.3万人超(2019年12月時点)。同サイトでの購買年齢層は25~44歳が全体の71%を占めています(18~24歳が9%、55歳以上が7%、2020年7月時点)。受注の多い商品カテゴリーでは、スーパーマーケット取扱商品・Groceries・Beauty・Health(食品、掃除用品、シャンプー)などが全体の約70%を占めています。
HKTVMall はオンラインショップだけでなく、香港域内に実店舗(O2O店舗)を68店舗(2019年12月時点)設置してオンラインとの相乗効果でここまで業績を伸ばしてきました。実店舗ではショールームとして流行の商品をエンド等で展開するほか、消費者がオンラインショップを通して購入した商品の受け取り場所としての機能も果たし、香港市場におけるEC市場の拡大に寄与してきました。
香港域内市場調査 Ipso が域内居民を対象に行った調査「New Ipsos Study on the impact of Covid-19 on Hong Kong Consumers」では、インタビュー対象者の71%がコロナ禍において HKTVMall を利用して食料品を購入したと回答。ほぼ約半数の48%が ParknShop を利用、37%が Wellcome を利用したと回答。その他の域内人気のオンライン食料品プラットフォームは、イオン(18%)、Zstore(14%)と続きます。HKTVMall が発表した2020年度第1四半期の取引額は12億香港ドル(約168億円)で、2019年第一四半期の6億3,400万香港ドル(約89億円)の約2倍となる取引額を記録しました。
香港でも引き続き巣ごもり需要が高まる中、HKTVMall が2020年8月17日から22日までの間、Facebookページで、ショッピング機能・ライブ機能を活用したライブストリーミングを行いました。電化製品フェアと題し期間中は日替わりのMC(元 TVB 司会者や家電系 KOL など)がそれぞれの担当ジャンルのオススメ商品などを紹介していくスタイルで、HKTVMall の顧客層及び香港におけるFacebookユーザー層(F1・F2層及びM1・M2層)にターゲットを絞ったキャスティングも特徴です。
もちろん HKTVMall で購入可能な商品を紹介し、今回のライブストリーミング視聴者のみの特典割引なども盛り込んでいました。HKTVMallのFacebookフォロワーは71万人(2020年8月28日時点)で、香港の人口の約10%と、既に多くのフォロワーを持っており、こうした企業にとっては新たな顧客リストの獲得に費用を使うことなくライブ配信できるメリットがあります。
HKTVMall は8月に Facebbokライブを開始したばかりですが、今後は定期的に開催し他の競合も追随してくることが予想されます。
引用元:HKTVmall Facebook
HKTVmall のアプリおよびウェブサイトの検索列で「LIVE」を入力したら、Facebook LIVE で紹介されている商品が出てきます。Facebook LIVE の概要でリンクも載せてあるので、そこのリンクをクリックしたら、Facebook LIVE で紹介されている商品が出てきます。
▋コロナ禍における香港でオンライン旅行代理店がライブコマースを開始
香港に本社を置き、アジアを中心に世界各国で旅行に関するアクティビティー及び現地ツアーなどの予約を扱うオンライン旅行代理店(OTA)のKLOOKがコロナ禍の香港においてデリバリープラットフォーム事業を立ち上げたことは業界でも話題となりました。香港内おける競合、foodpanda、Uber Eats、Deliverooなどとの差別化としてオンライン旅行代理店ならではの Staycation に絡めた商品企画や、旅先気分を味わえる多国籍料理などが魅力です。
Nielsen が発表した「香港消費者市場2020におけるCOVID-19の影響」によると、コロナ禍における香港居民の喫食変化としてテイクアウト及びデリバリー需要の増加などの喫食変化をあげています。コロナ前の香港では自宅で調理して食べるより外食したほうが時間もお金も節約できるということで外食文化が根強く浸透していたのですが、コロナ禍におけるレストランの営業規制及び集合人数規制なども影響するのと同時に、コロナを不安視して極力食事は家で食べるようなライフスタイルの変化が顕著にみられます。
香港居民は外食する機会を極力減らし、人との接触を最小限に抑えてデリバリーサービスを求める傾向に。
外食の平均頻度が週3.70回から週2.86回に減少。逆に、テイクアウト・フードデリバリーサービスの週平均頻度は週に4.30回に増加し(流行前の3.31)、家庭での調理は週に6.54回に増加(流行前は4.77)。
そんな中、KLOOK が2020年8月20日のアプリ上でライフスタイルブランドのブルーノ(BRUNO)とタイアップして行ったライブコマースには大変注目が集まりました。今回のライブコマースには香港の著名フード系 YouTuber『Dim Cook Martin』もゲスト参加し、約一時間ブルーノ(BRUNO)製の調理機器を使い、海鮮鍋を料理するといったスタイルで配信しました。もちろんライブ配信中も画面左下からブルーノ(BRUNO)製の調理機器や食材のセットも購入可能です。
▋今後は香港においてもライブコマースがマーケティング手法の一つに
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、香港政府が日本以上に厳しい感染防止策(実店舗の休業要請や営業時間短縮)を要請している中、香港居民の喫食文化や消費活動は大きく変化しています。コロナ禍において実店舗が休業または営業時間短縮を余儀なくされる中、企業がEコマースで売り上げをカバーしようとする流れは必然のことではないでしょうか。
外出の自粛を余儀なくされているとはいえ、買い物そのものへのニーズは決して衰えているとは思いません。渡航規制の続く香港では最近『日本ロス』という言葉も耳にするようになりました。年間200万人の訪日客を有する香港では日本に渡航できない中、香港で日本を感じられるプロモーションなども行われています。
香港最大手の旅行代理店 EGL Tours が立ち上げた日本食材品をメインに扱う EGL Market や香港オンライン旅行代理店の KLOOK が立ち上げたフードデリバリープラットフォームなどのEコマース事業を立ち上げ、SNSを通してのライブストリーミングやライブコマースといった香港では新しい取り組みも行われています。
コロナ禍においてEコマースとライブストリーミング、またはライブコマースを軸に巣ごもり消費のニーズを捉えていくことは、香港でビジネスを展開する日系小売企業やメーカーの担当者にとっても避けられないテーマではないでしょうか。香港でのライブコマースをお考えの際は、是非香港市場を熟知したナンバーワン日系PR会社のベクトル香港へご相談ください。
Vector Group International Limited ベクトル香港事務所は2012年6月に設立。
ベクトルグループの香港事務所として、香港唯一の日系メジャーPR会社の地位を築いています。人口当たりの訪日客数、および日本食品輸入量で世界第一位を誇る香港の地で、ローカルスタッフによるローカルの強いネットワーク、デジタル部門との一気通貫体制を武器に、JNTO香港事務所やJETRO香港事務所をはじめとした日系クライアントのインバウンド施策をサポートしています。
【事業内容】
PR業務代行・コンサルティング、ブランディング業務、IRコミュニケーション、キャスティング、リスクマネジメント業務、マーケティングリサーチ業務、イベントの企画/実施、SNSコミュニケーション、マーケティング
文野 陽介
Vector Group International Limited ベクトル香港
PRコンサルタント
2019年10月に香港に赴任して以来少しでも香港のことを知りたいと言う想いから休日は香港各地を巡り風景写真や動画を撮っています。2020年4月よりYouTube(Yosuke Bunno文野陽介)にも動画を定期的にアップしていますので、ぜひご覧ください。コロナ禍で始めた新たな趣味で人様に御見せできるようなレベルではないのですが、少しでも香港を感じ取っていただければと思います。
►►「Yosuke Bunno文野陽介」YouTube:https://www.youtube.com/user/yosukebunno
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