【ベクトル海外駐在員コラム】香港Vol.5:コロナ禍の中、インバウンド回復期に備え今から始める情報発信業務

JNTO調査と観光庁予算決定概要から読み解くインバウンド回復期に備えての情報発信業務についてJNTO香港などが現在取り組む事例などを交えご紹介します。
【ベクトル海外駐在員コラム】香港Vol.5:コロナ禍の中、インバウンド回復期に備え今から始める情報発信業務

こんにちは、ベクトル香港の文野でございます。香港より現地の「生」の情報をお届けします。

全世界で拡大する新型コロナ感染症の拡大を受け日本政府も緊急事態宣言を発令(2021年1月20日現在11都府県)するなど世界中で未だ経済活動再開と感染症拡大防止策のバランスをどこに置くかなどの模索が続き、依然として国境を越えた移動制限は多くの国、地域で継続しています。

ここ香港も例外ではなく、1月20日現在、香港政府の防疫措置として、レストラン事業等飲食店の店内営業を午後6時から午前5時まで禁止し、バーやナイトクラブは営業停止となっています。また、公共の場所での集合規制も2名までとなっており、レストラン事業等飲食店での飲食も一卓二名までとなっています。域内の全ての幼稚園、小学校、中学校(インターナショナルスクールを含む)の対面授業及び校内活動も旧正月休暇が終了するまで停止となっています(※但し、防疫措置を十分施すことを前提に、人数や時間を限定する等の条件付きで対面授業も一部可能)。

また、出入境関係についても、海外から香港へ入境は香港居民(香港IDもしくは査証保有者)のみが入境可能となっています。ただし、これまでの入境後14日間の自宅での隔離から指定のホテルでの21日間の指定ホテルでの強制検疫に変更となっています(2021年3月31日まで)。


前回のブログ「香港におけるステイケーションとトラベルバブル」でも少し紹介しましたが、2020年11月からスタートする予定であった香港-シンガポール間で合意した航空トラベルバブル(ビジネス・観光など渡航目的に関係なく新型コロナウイルス対策の隔離措置を免除)も2021年以降に延期になるなど短期的にはまだ2国間(2地域間)の移動ですら厳しい状況が続いています。

しかし、中長期的にみると、国際観光や国境を越えた人の移動は必ず戻ってくると香港政府観光局などの関係者は口を揃えて言っているように、この先のインバウンド回復期に備え継続的なプロモーションや情報発信業務は大変重要になります

今回はJNTO日本政府観光局が台湾・香港・英国・豪州向けに実施した需要回復局面の旅行者ニーズと施行に関する調査令和3年度(2021年度)観光庁予算決定概要から読み解くインバウンド回復期に備えての情報発信業務についてJNTO香港などが現在取り組む事例などを交えご紹介していきます。



▋訪日旅行市場におけるコロナの影響と需要回復局面の旅行者ニーズと施行

先ず初めにJNTO日本政府観光局が4市場(香港・台湾・英国・豪州)を対象に実施したオンライン調査「訪日旅行市場における新型コロナ感染症の影響と需要回復局面の旅行者ニーズと施行に関する調査」(n=519/実査期間2020年9月) によると調査した4市場の中で香港市場が一番需要回復の進む市場となっています。

コロナの危険性を「高い」と認識している割合が72.0%いるのにも関わらず5割以上の回答者が2021年中の訪日旅行を希望しています。逆に英国及び豪州はコロナの危険性を「高い」と思う割合いが半数以下にも関わらず5割近くの回答者が2022年以降の訪日旅行を希望しています。このことからも需要回復が早く進むのは香港・台湾といったショートホールがロングホールより先行すると思われます。(調査レポートの10ページ目をご参照ください。)

需要回復をリードする人々は訪日経験者の方が未経験者より積極的ではあるものの、調査では今後の訪日頻度はコロナ以前よりも減るという回答が香港でも28.2%確認されました。そのため訪日意欲の高い消費者が多い香港市場であっても訪日香港人数の速やかな回復に影響し得る傾向がゼロではない点に留意する必要があります。(調査レポートの14~15ページ目をご参照ください。)


海外旅行再開の契機となるのは何かという質問に対してですが、4市場(香港・台湾・英国・豪州)ともに「治療薬の発見」、「治療法の向上」、「ワクチン接種」などが上位に上げられており、入国時、帰国時の隔離措置の解除よりも上位を占めています。(調査レポートの17ページ目をご参照ください。)

次にウィズコロナの海外旅行における訴求コンテンツですが、コロナ以前と変わらず大きな変化はなく「自然体験」のみが4市場で「増える」が「減る」を上回り、人が密集するイメージのコンテンツでは「増える」より「減る」の割合が高くなっています。これは現在の香港の状況も同じで渡航が制限される中、域内でのステイケーション、特にキャンプ、ハイキング、トレッキングなどの自然体験が域内では流行しており、メディアにも多く取り上げられるなど、週末のアウトドアショップなども常に人で溢れています。(調査レポートの19ページ目をご参照ください。)


調査結果から分かるように香港市場向けのインバウンド回復期に備えて今からできる情報発信ですが、香港市場を含めた今回の4市場に必要とされている情報の上位に「感染症対策の状況」や「感染者数の統計情報」があげられているように、通常の観光情報に加え旅行の行程上で起こりうる様々な懸念に対応した情報がセットで求められています

また、コロナ前の香港では、観光情報源の上位に「知人・友人などの口コミ」が上位を占めていましたが、ウィズコロナでの情報収集は「旅行先の政府ホームページ」や「居住地の政府ホームページ」などが上位を占めているように、ウィズコロナの旅行では行先の状況把握にあたり、旅行先・居住国(地域)などの公的な情報源の利用意向が今後も高まっていくと予想されます。



▋JNTO香港の現在実施の情報発信

ここからはJNTO香港が現在実施している情報発信業務を2つご紹介させていただきます。


「日本から香港のみなさまへのメッセージ」プロジェクト

先ず初めにビジットジャパン連動事業として2020年12月からJNTO香港事務所が実施しているのが「日本から香港のみなさまへのメッセージ」プロジェクトです。

☞ サイトリンク:「超期待 日本再玩過」(JNTO香港市場向けオフィシャルサイト内 特設ページ) 

これは「超期待 日本再玩過(⽇本語意訳:⽇本にはいつかまた行こう)」をテーマに、コロナ禍において訪日旅行ができない中でも国境再開後に香港居民に再び日本を訪れてほしいとの思いを込めた日本に対する興味関心の維持を目的としたプロジェクトです。香港からの訪日旅行における定番人気である「グルメ」「温泉」「自然を感じるアクティビティ」をテーマにした映像を使用した、香港域内での屋外広告やオンライン広告の展開、JNTOウエブサイトやFacebook上で日本各地の観光地などからメッセージを発信しています。

引用元:Visit Japan HK(JNTO香港事務所 公式YouTubeチャンネル)

メッセージボードの内容

① 我哋都好掛住你哋啊︕(私たちもあなた達が恋しいです︕)
② 香港嘅朋友,你哋好嘛︖(香港の皆さん、お元気ですか。)
③ 期待可以快啲同你哋⾒⾯︕(いつかまた会えることを期待します。)
④ 旅⾏通關後,⼀定要嚟搵我哋︕(旅⾏再開した時に、必ず遊びに来てください。)
⑤ 希望香港嘅朋友⼀切安好︕(香港の皆さんが元気でいることを願っています︕)
⑥ 為咗日後大家玩得安心,我哋會做好防疫措施︕ (皆さんが安心して楽しめるように、私たちは予防対策を実施しています!)


上記のメッセージからもわかるように渡航を促すようなことは発信せず、渡航制限がある中で香港居民に不快感を与えるような内容は一切発信していません。このことからも渡航が制限されている中では飛行機の予約・購入を促すような情報発信は避けた方が無難と言えます。

実際JNTO香港や観光関連のキャンペーンの特典もコロナ前は航空券やホテル宿泊特典などが主流でしたが、コロナ禍の今では自治体特産品の詰め合わせなどが主流となっています。


「今の日本を伝える写真」企画

続いてのJNTO香港独自の取り組みとしてご紹介したいのが、「今の日本を伝える写真」企画でJNTO香港オフィシャルFacebook JNTO香港オフィシャルInstagramにて昨年の秋から続いているSNS投稿用コンテンツを日本各地から募集して域内に発信している取り組みです。
※参考:JNTO香港“今の日本を伝える写真” SNS 投稿用コンテンツ募集案内

JNTO香港が掲載希望しているテーマとして季節の魅力を感じられる写真香港居民にウケのいい動物の写真旬のグルメなどがあげられますが、最後に『ユニークなCOVID-19対策を行って営業している観光施設等の風景』と明記してます

JNTO香港 公式Instagram(@visitjapanhk)での投稿


ここにも香港市場向けの情報発信のヒントがあります。観光施設、鉄道会社、空港などが取り組む防疫対策などもここに当てはまります。渡航制限がある中でいかに安心・安全を訴求できるかが重要になっています。

JNTO香港オフィシャルFacebook

JNTO香港オフィシャルInstagram 



▋ポストコロナを見据えた予算項目

最後に、令和3年度(2021年度)観光庁予算決定概要の中からポストコロナを見据えた予算項目についてご紹介します。

先ず初めに新規予算項目として計上しているのが「新たな旅のスタイル促進事業」(504百万円)で観光産業の再生と新たな旅のスタイルの普及及び定着を促進することを目的としています。これは、新型コロナウイルス感染症による世界的な社会変化を踏まえて、休暇所得の分散化を進めることで、国内向けにはワーケーション、プレジャー、サテライトオフィスの普及及び促進を進め、旅行会社とも連携して新たな旅のスタイルに合わせた商品造成を支援していく流れになっています。渡航が制限される中でも日本が安心安全な国であることを海外に向けて継続して発信していくうえで重要なことです。(観光庁予算決定概要の8ページ目をご参照ください。)

次に、国内外の観光客を惹きつける滞在型コンテンツの造成としての新規予算項目「DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」(800百万円)を計上し、消費機会の拡大や消費単価の向上を目指し、これまでの態様に捉われない新たな観光コンテンツ及び価値を生み出すべく、デジタル技術を複合的に活用しながら、観光サービスの変革と新たな観光需要の創出を実現していくとしています。


コロナ禍において渡航が制限される中、今後のオンライン観光の普及に対応して近い将来訪れるDXデジタルトランスフォーメーション(※デジタル技術及びデータを活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、組織の文化・風土や業務を変革することにより、競争上の優位性を確立する事)を推進していく流れになります。

具体的な事業の柱としては3つあります。

  • 観光空間の変革(オンラインを活用した来訪意欲の増進)
  • 観光体験の変革(今までにない新しい観光コンテンツ・価値の創出)
  • 地域観光の変革(観光地経営・エリアマネジメントの発展)

この中でも特に①観光空間の変革についてはコロナ禍における渡航制限がある中で早急に取り組むべき事業で、オンラインツアーのように観光客・事業者がコミュニケーションを取り合えるプラットフォームを構築して、オンライン空間上でのツアーを通じて観光地の情報収集や消費の機会等を提供していく流れになっています。(観光庁予算決定概要の16ページ目をご参照ください。)


最後に、「新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化」(2,250百万円/前年度予算比152%)でも、新たな体験型観光コンテンツの造成による消費拡大に向け、アドベンチャーツーリズム(※アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行)のような3密を避けつつ日本の本質を深く体験・体感するWithコロナ時代における新たなインバウンド層への訴求力の高い体験型コンテンツ等の造成と明記されています。

こちらは冒頭紹介しました調査結果の中でのウィズコロナの海外旅行における訴求コンテンツにも関連してきます。逆に言えばこれまで直行便がなく、これといった集客コンテンツがなかった地方自治体にも三密をさけた『自然体験』などの体験型コンテンツでPRしていくいい機会とも言えます。

JNTO香港の「超期待 日本再玩過(⽇本語意訳:⽇本にはいつかまた行こう)」プロジェクトのトップページにも掲載されている香港からの誘客促進に苦労していた高知県をはじめとする豊かな自然と地域に根差した体験に大きなポテンシャルがある自治体にも今後はチャンスが巡ってくると思っています。(観光庁予算決定概要の17ページ目をご参照ください。)



▋まとめ

今回はJNTO日本政府観光局が実施した需要回復局面の旅行者ニーズと施行に関する調査令和3年度(2021年度)観光庁予算から読み解くインバウンド回復期に備えての情報発信業務についてJNTO香港などが現在取り組む事例などを交えご紹介してきましたが、今から始めることとして2つあります。

一つ目は市場の旅行業界や消費者の最新動向を常に把握することです。ここ香港につきましても毎週のように政府発表がありその都度飲食店規制や集合規制が変わります。こうしたコロナ関連の最新動向の把握は非常に重要です。

二つ目は、インバウンド回復期に備え、一度つながったお客様との関係維持を含めた将来の訪日につながり得る継続的な情報発信です。SNSなどのデジタルマーケティングで地域の魅力を発信していき、状況が改善するその時に備えて継続的にコミュニケーションをとっていくことが重要です。

香港向けの訪日インバウンド回復期に備え今から始める情報発信業務のご相談はぜひベクトル香港の文野までお気軽にご相談ください



ベクトル香港(Vector Group International Limited)について

Vector Group International Limited ベクトル香港事務所は2012年6月に設立。

ベクトルグループの香港事務所として、香港唯一の日系メジャーPR会社の地位を築いています。人口当たりの訪日客数、および日本食品輸入量で世界第一位を誇る香港の地で、ローカルスタッフによるローカルの強いネットワーク、デジタル部門との一気通貫体制を武器に、JNTO香港事務所やJETRO香港事務所をはじめとした日系クライアントのインバウンド施策をサポートしています。

【事業内容】
PR業務代行・コンサルティング、ブランディング業務、IRコミュニケーション、キャスティング、リスクマネジメント業務、マーケティングリサーチ業務、イベントの企画/実施、SNSコミュニケーション、マーケティング





ベクトル香港文野陽介
Author Information

文野 陽介
Vector Group International Limited ベクトル香港
PRコンサルタント


イギリスの大学では経済学を専攻。2019年10月に香港に赴任して以来、主に日本の農林水産品及び食料品のPRを担当。他にも自治体の観光・物産も担当。趣味はゴルフ、マラソン、トライアスロン、アクアリウム。週末は香港各地を巡り風景写真や動画を撮影。YouTube(Yosuke Bunno文野陽介)動画も定期的にアップしていますので是非ご覧ください。少しでも香港を感じ取っていただければと思います。

►►「Yosuke Bunno文野陽介」YouTube:https://www.youtube.com/user/yosukebunno




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