コロナ禍以前は訪日外国人の最多数を占めていた訪日中国人。徐々に外国人受け入れが解禁される中、どれほどの回復基調にあるのか。
JNTO(日本政府観光局)の訪日外客統計からピックアップしたものを月次更新でお届けします。
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失敗しない、中国マーケティングガイド
2025年春のインバウンド動向
①中国の旅行客はインバウンド回復のカギ
JNTOの発表によると、2024年1年間、中国本土からの観光客は606万名を超えており前年の179万名の3倍以上増加。今年に関しても、2024年3月の452,525名から、2025年3月は661,700名と増加しており、夏休みや国慶節の時期に向けてさらに増加が見込まれています。
(出典)日本政府観光局(JNTO)
また、旅行支出額は近隣エリアの韓国・香港・台湾・タイに比較すると消費額も高く、日本の観光経済を牽引する最大の原動力といえる。
➁複数回入国可能な観光ビザの取得拡大&ニッチな小都市旅行への需要増加
中国大手旅行アプリ「Ctrip」によると、2024年1月~7月の期間、中国本土の観光客が申請した日本への観光ビザのうち、複数回の入国が可能な観光ビザ(3年または5年)が48.41%を占め、前年比で大幅に増加しています(2019年の同時期比では19.75%に留まっているため今後のさらなる拡大に期待)。
また、旅行のスタイルも変化しています。従来の団体旅行の割合は急速に縮小し、個人旅行を好む1990年代以降生まれ(現在20~35歳)の人の割合が大幅に増加しました。
中国の若者はステレオタイプの観光地を訪れることを好まず、古い都市で新しい遊び方を探求することをより好む傾向があります。2024年以降、中国人観光客の日本への海外旅行先として急成長している都市トップ10はすべて小都市です。
日本への数次入国観光ビザを持つ中国の若者が、日本の三大都市圏(東京・大阪・名古屋)の主要都市を頻繁に行き来し、ソーシャルメディアに「東京・大阪・京都・名古屋をX回訪れた人の旅行ガイド(≒日本に詳しい人が教える、大都市以外の旅行ガイド)」を次々と投稿するにつれ、日本の小都市を探索することが、新しいトレンドであり、旅行のスタンダードなスタイルへと変化しつつあります。
③ソーシャルメディア、REDによる旅行モチベーション刺激
WeiboやRED BOOK、更にWeChatの動画チャンネルやDouyin等、様々なソーシャルメディアを通じて、インフルエンサーや公式企業アカウントだけでなく、一般ユーザーによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)が発信されています。このような実際旅行経験者によるニッチな観光スポットやアクティビティの紹介の蓄積によりニッチな小都市も観光地として注目を集めることがあります。
特にRED BOOKは、「2024小红书10大搜索趋势洞察报告」によると、7割のユーザーは毎日6回以上RED内で検索を行うといわれています。
①自分に合う情報がフィードに流れてくる=受動的な情報接触
②気になった情報を検索画面で検索し、詳細情報を得る=積極的な情報接触
ユーザーはこのような二通りの利用方法でRED内で情報を得ます。
RED内検索を行う理由1位は「真実性が高いと思うから(75%)」という結果が出ており、RED内の規則に従う形で投稿されたリアルな口コミはユーザーの意思決定に強い影響力を持っているといえるでしょう。
④観光消費の多様化
中国人観光客の消費行動は、単なるショッピングから、文化体験やグルメ探索などの多様な消費へと移行しています。30歳以下の外国への旅行客83%は「ユニークな文化体験ができるか」が旅行先選定の一番のポイントになると回答しており、「その場に行けばどのような経験ができるか」「何を見たり、知ることができるか」という点を明確に伝えることが旅客数増加へ影響を与えると考えられます。